二者択一
乗務デビューして間もないころ、無線で呼んでいただいた年配の男性から「桂駅まで頼みます。」 「はい、桂駅ですね。かしこまりました。」とのやり取りをします。
するとすかさず「あんた、新人さんやな。普通はそっちから東口か西口か尋ねるもんやで。」と注意を受けます。
(ああ、そやったんか、でもそんなん教わってへんしなぁ…)と心でつぶやきながら「不勉強でたいへん申し訳ございません。」と丁重にお詫びしました。
「ほなコッチから向かうんやからどっちかわかるな?」
追い打ちがかかります。
「はい、東口ですね。」
「そや、東口やで。これから大変やろうけど頑張ってや。」
叱るだけではなくちゃんとフォローまでいただいたこの時のことはよく覚えています。
これを機に「一つの行先」で車をつけるポイントが二つ(以上)あるようなところを学習しました。
(※太字は公式の呼び方ではありません)
・JR京都駅 ①烏丸口(正面)②八条口③西口(伊勢丹側)
➝乗客が「うーん、どっちなんだろう?」と言われた場合は「新幹線ですか?在来線ですか?」と尋ねます。
・近鉄(地下鉄)竹田駅 ①西口②東口③南口
・JR二条駅 ①正面②西口
・地下鉄北大路駅 ①北大路通り側②今宮通り側(北口)
・JR長岡京駅 ①西口②東口
だいたい乗られた位置から最寄りがどこかわかるので、先にこちらから「では東口でよろしいでしょうか?」と言うことでお客様に安心感を与えられると思っています。
上記は駅ですが、それ以外にも早めに聞いておかないといけない箇所があります。
京都市内中心部から伏見区の向島(むかいじま)や宇治市、城陽市までの仕事はそこそこあります。
そこでよくあるのが…
「観月橋をわたって下さい。」と言われたときは間髪を入れず「上ですか?下ですか?」と返します。
「上」とは新観月橋(オーバーブリッジ)のことで、「下」は(旧)観月橋を指します。
明らかに「上」を通行する時には尋ねませんが、微妙なときがあります。
そのような時は聞いておかないとリカバリーが容易でないのです。
例えば確認を怠って「上」を走行した場合、「あ!下を渡って(宇治川の)堤防を走ってほしかったのに。」となりかねません。
お客様が携帯で通話してようが、お連れ様と盛り上がっていようが、居眠っておられようが聞き出さなくてはならないのです。
こういった事はなるべく早い段階で聞き出しておくことに限ります。
あとカンタンそうにみえて意外と頭を使うことがあります。
「三条木屋町に行って下さい。」
この場合、ひと口に三条木屋町と言われても降車ポイントによってルートが大きく変わるので、できるだけ細かくポイントを聞くようにしています。
例えば左京区高野という地点から三条木屋町の下がった(南へ行った)とこを言われた場合は地図の線をたどる必要があります。
同様に各ポイントにつけるにはルートが異なります。
京都は本当に一方通行が多く、加えて右折も時間帯規制、終日規制など色々あるのでこれも覚えておかなくてはなりません。
これはこれでまた違う機会に取り上げたいと思います。
とにかく経験こそが一番の味方になってくれるであろうことは一択で決まりです。
掛見